この記事を見るみなさまへ一言断っておきたい。
今日は10月下旬に開幕する女子硬式野球の頂上決戦である『第8回女子野球ジャパンカップ』出場の残り1枠をかけ、埼玉アストライアとレイアが戦う試合である。
本来なら試合結果を簡潔に伝えたいところではあるが、今日はこの戦いに奮闘した育成球団レイアを讃え、記事を書かせてほしい。
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レイアは、高卒入団選手のみで編成される球団である。次代を担う一流選手の育成を目的にした球団で、2015年春に「東北レイア」として宮城県仙台市に誕生。2017年より、京都府城陽市に拠点を移している。
彼女たちはヴィクトリアシリーズに出場することはできない。年間の公式戦は2回(ティアラカップとジャパンカップ出場決定戦)。選手全員が専用の寮で生活をし、アマチュアチームとの交流試合や練習と試合運営を重ねる。また、年に3回鹿児島県の鹿屋体育大学と連携し、スキルアップのため各個人の動作解析を図る合宿を行っている。
これは2年間、選手としての技術を磨くこと。そして、1人の人間として成長し、トップチームへ昇格させる独自の育成プログラム。いわば、『女子プロ野球界への登竜門』である。
現にレイアから昇格し、トップチームで活躍する選手を数多く輩出する実績を持つ。
入団して1年目の集大成となる今日の試合。
彼女たちの今シーズン最後の挑戦が始まる!
レイア先発は、今夏前人未到の6連覇を果たした女子野球W杯日本代表でも活躍した水流麻夏。対するアストライアは、ヴィクトリアシリーズ不振に苦しんだエース磯崎由加里が先発。
初回から両投手の変化球中心の投球が冴え、2回裏までスコアに0が並ぶ。
両投手の好投が光る中、先制したのはアストライア。3回表9番佐々木希がサードゴロエラーで出塁。盗塁と進塁打で1死3塁とし、打席には2番加藤優。
「ボールに合わせず強いスイングをする。3塁走者の佐々木選手は足があるから、最低でも外野フライで1点取れる。磯崎さんがいいピッチングをしていたから何としても先制したかった」とコメント通りに外角高めの直球を捉え、センターへの犠牲フライで3塁走者が生還し、ノーヒットで1点を先取。
試合を有利に進めていくため重要な先制点。しかし先制打を放った加藤の顔に、いつもの爽やかな笑みは無かった。試合後のコメントでは、
「こういう試合は何があるか分からない。最後まで油断できない」と語っている。
それもそのはず。アストライアは、8月5日のティアラカップ香川大会でレイアに9回サヨナラ負けを喫しているのだ。相手が育成チームとはいえ、決して気を緩めることはできない。トップチームの選手にとっても、レイアは侮れない存在になっているのだ。
加藤の先制打後、アストライア打線はレイア投手陣の前にヒット2本無得点に抑え込まれる。
反撃したいレイアだったが、磯崎の緩急抜群の投球の前に自分たちのスイングを崩され、内野ゴロの山を築かされる。何度流れを持っていかれそうになったか。それでも諦めない。「トップチームにとにかく勝ちたい。ジャパンカップに出場したい」。その一心でミスもみんなでカバーし合った。
そんな彼女たちに好機が訪れる。
6回の裏2死走者無し、打席には9番石黒貴美子。依然アストライア磯崎の前に1人の走者も出せずにいたレイア打線。結果はストレートのフォアボール。この試合初めての走者が出塁する。
続くは1番白石美優、追い込まれてから捉えた打球は右中間を破るツーベースヒット。この試合初めてのヒットとなった。均衡は完全に破られた。
試合終盤に訪れた1打逆転の大チャンス。ここで迎えるは、攻守でチームを盛り立ててきた2番戎嶋美有(えびすじま みゅう)。1ボール1ストライクからの3球目、高めの直球を捉えた。鋭い打球がセンター方向へ飛んだが、無情にもピッチャー磯崎の正面へこぼれた。ボールを拾い丁寧にファーストへ送球。この回無失点に終わる。しかし、「私たちだってできる!」そう思えたイニングだっただろう。
そして最終回の攻撃、先頭3番の中嶋南美が目の醒めるようなライト前ヒットを放ち出塁。しかし後続が倒れ、2死3塁となった。打席には先発投手としてチームに流れを呼び込んだ6番水流。最後の望みをかけ、捉えた打球はアストライアのセカンド川端友紀の正面へ飛びゲームセット。あと一歩だった。この瞬間、埼玉アストライアのジャパンカップ出場が決定した。
試合後、レイア松村豊司監督は「半年間の練習の成果が出たいい試合だった。ミスは出たがみんなでカバーし合う。レイアらしい野球ができた。また来年に向けて、個々のレベルアップができる指導をしていく」と語った。
先発の水流は、「下克上を目指して試合に挑んだ。敗れてしまったが私自身のリズムで投げられた。球速アップを目指してこの冬で一回り成長したい。」と駆けつけたファンへ自身の成長を誓った。
先発で好投した埼玉アストライア磯崎由加里
試合後のインタビューに答えるレイア水流麻夏
先発の水流は5回2/3を1安打1失点と好投した。6回2死から登板した2番手今井巴菜も1回1/3を投げ、1安打無失点で抑えた。打撃もトップチームの投手を相手にしても振り負けない力強いスイングだった。先制を許した犠牲フライのシーンも無駄のない中継で、間一髪のプレイを魅せた。入団して半年間、慣れない環境や厳しい練習を乗り越え、逞しくなった姿を多くのファンの前で魅せた。
試合後太田幸司スーパーバイザーは、
「今日の主役はレイアの選手たち。彼女たちの頑張りを見て、女子野球界の未来は明るいと安心した。今日の試合を自信に変えてトップチームへ上がった時、リーグを代表する選手たちに成長してほしい」とレイア選手の健闘を讃えた。
試合観戦中ふと思ったことがある。なぜだろう?
一つ一つのプレイが荒々しく、ミスも多く出るのになぜか試合に見入ってしまう。気付くと彼女たちを応援している!
「将来この子達はどんなプレイをする選手になるんだろう?」
女子プロ野球選手1年生の彼女たちの戦う姿に親の目を持ってしまう。 下積みを経た選手たちの成長を楽しめることも女子プロ野球の大きな魅力のひとつであろう。
今後の彼女たちの成長を強く期待したい。
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<次回試合>
10月7日(日)13:00試合開始
日本シリーズ女王決定戦
京都フローラ 対 愛知ディオーネ
川口市営球場